みずこし動物病院

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2008年01月20日(日)

前十字靭帯断裂 [病気に関するお話]

最近、自分が膝を痛めてしまったので、今回は膝の怪我の話です。
 ワンちゃんで時々、はしゃいだ後や段差をジャンプした瞬間、「ギャン!!」と叫んだと同時に後ろ足がほとんど着地できず、上げっぱなしになってしまい病院へ連れてこられることがあります。
 けっこう多いのが、前十字靭帯断裂と、それにともなう半月板損傷です。前十字靭帯とは膝関節の中にあり、太ももの骨(大腿骨)とその下の骨(脛骨)をつなぐ強力な靭帯です。膝に靭帯が許容できる範囲を超えた負荷がかかると断裂してしまい、着地できなくなります。
 診断は主に触診で行います。「ドロワーサイン」が確認できれば完全断裂であり、手術が必要です。
「ドロワーサイン」とは前十字靭帯が切れてしまうと、大腿骨と脛骨をがっちり固定することができなくなるため、触診のとき膝関節に力をかけると「カクン」という感じで脛骨が前方へスライドしてしまう現象のことです。
正常膝では「ドロワーサイン」はみられません。一般的に15kgまでのワンちゃんであれば無麻酔で診断できますが、大型犬やその子の性格によっては麻酔をかけて脱力させないと診断できないこともあります。このとき、膝を動かしたとき「パキッ、パキッ」というクリック音が聞こえるようだと半月板も損傷していることが多いです。ほとんどの場合、診断と同時に膝関節のレントゲン写真を撮影し、膝関節内のダメージを同時に評価します。
 一般的には放置しておくと、重度の変形性関節炎を引き起こすためできるだけ早期に手術をするのが望ましいと考えられますが、最近は手術をしない保存療法も有効であるという考えも出てきています。急性の外傷による靭帯断裂であれば手術で良好に回復します。ただし、もともとの関節炎や内分泌疾患の影響で、靭帯が脆弱になった結果の断裂では、手術したのに歩様状態はいまいち改善されないこともあるので要注意です。
 手術法はさまざまです。残念ながらどの手術を行っても多かれ少なかれ、膝の関節炎を引き起こします。手術の目的はできるだけ早期に膝の機能を回復させることと、少しでも関節炎の進行を軽度にすることです。
 手術方法はとてもたくさんあります。現在は、今までやられてきた手術方法と新しく考案された手術法の過渡期であり、どの手術方法がベストかわかりません。
 最近まで、前十字靭帯断裂で半月板損傷を併発している場合、可能な限り損傷した半月板を除去することが推奨されてきました。実際、私が手術をする際は損傷した半月板と切れた靭帯はできるだけ丁寧に切除しています。しかし、最新の知見(2007.12月 獣医畜産新報)では、半月板を切除すると残った半月板に大きな負荷がかかり、結果的に関節炎を助長すると書かれています。しかしながら、出所は忘れましたが、犬では半月板をすべて切除しても問題は起こらないと書かれているものもありました。
 半月板ひとつとっても、諸説がありますので手術方法のバリエーションの多さは推して知るべしです。
 実際やっている先生は各々が、自分の術式がベストと考えています。うちではいまのところ、昔からやられていて治療成績のよい関節内法であるオーバーザトップの変法と関節外法の脛骨・外側ファベラ締結術の併用を行っています。数年後にはまったく異なった術式を行っているかも知れません。
 更に、最近では人間と同様、術後できるだけ早期のリハビリテーションが、機能回復に重要であると言われてきています。手術して「はい、終わり。あとは時間が治してくれるでしょう。」というのではないようです。術後、ひたすら安静というのは時代遅れのようです。
 内科分野もそうですが、整形の分野もどんどん治療に対する考え方が変化してきているので、より治療成績が良く、動物に負担がかからない治療法を選択していかなくてはなりません。

Posted at 08時33分

2007年11月20日(火)

10才過ぎたら腎不全に注意 [病気に関するお話]

腎不全をご存知でしょうか?
腎臓は、体のいらないもの、老廃物を尿として排出する機能を持っています。
 機能のしっかりした腎臓は、少しの水にできるだけたくさんの老廃物を溶かし込む、すなわち濃い尿を作り出すことができます。
 水分を摂取しすぎたときは薄い尿が出て、大量の汗をかいたりして水分が不足がちなときは色とにおいのキツイ尿が作られるのは誰もが経験的に知っていることと思います。
しかし、年をとって腎臓の機能が落ちてくると、尿を濃くする能力、濃縮能が衰えてきます。
 たとえば、今までは1日500mlの水分で体の老廃物を溶かして排出できていたのが、年とともに腎臓の濃縮能が落ちてくると、これまでと同じだけの老廃物を排出するのに1000mlもしくは、1500mlといったよりたくさんの水分を必要とすることとなります。
 この時点ではまだ、やたら水を飲むというだけで、食欲や元気もあるので、なかなか病院へ連れて行く気にならないかもしれません。しかし、腎不全の治療が一番肝心なのは、この初期の元気なうちです。なんでも食べてくれるうちに、腎不全が見つかれば、腎臓になるべく負担をかけない食事を使用することにより、腎不全の進行をゆっくりにすることが可能です。
 血液検査で腎不全と診断がつく場合、残念ながら病気としては中・後期から末期であることが多く、はっきりいって有効な治療時期を逸しているといえます。
血液検査で異常が見つかった腎不全の治療のメインは脱水症状の緩和のための定期的な点滴と時々起こる消化器症状(下痢・嘔吐)に対する対症療法、飲み薬が飲めれば、活性炭製剤の投与などです。
 腎臓というのは、ご存知のように左右2つあります。腎機能がしっかりしているうちは1つなくても十分生きていくことが可能です。もともともっていた機能の1/4以下になってはじめて血液検査に異常が出ます。つまり血液検査で判明した時点ではかなり腎不全が進行しているのです。
 血液検査では異常はないか、もしくはごくわずかな異常値で、水をたくさん飲んで尿をたくさんしているが食欲元気もあるうちに、食事療法をスタートするのが重要です。
 現在のところ、人間のように人工透析や腎移植は現実問題、動物では実施が難しいですからね。
 年をとってやたら水を飲みだしたら、腎不全以外に重大な病気はたくさんあります。
 元気なうちに診察を受けていただくようお勧めいたします。

Posted at 15時45分

2007年09月23日(日)

ワクチンってなあに?パート2(好ましくないこと) [病気に関するお話]

前回は伝染病ワクチンの有効な点をお話しました。
今回はあまりよろしくないお話です。

前回と繰り返しになりますが、ワクチン接種は伝染病を予防する上で、大変有効です。
 私は、一獣医師として定期的なワクチン接種は、是非すべきであり、動物を飼育する以上、予防できる病気はあらかじめ予防しておくことは飼主様の責任と考えております。

ところが、ワクチン接種をすることでワンちゃん、猫ちゃんに好ましくない副反応が出てしまうケースがあります。
私がこれまで経験したケースです。
ワンちゃんの場合
1.接種後30分〜9時間後に瞼や口が腫れて痒がる(人間の蕁麻疹みたいなもの)
2.接種後30分〜9時間後に嘔吐や水様性下痢など消化器症状を発症する
3.接種部位の腫脹・痛み
猫ちゃんの場合
接種翌日に40℃以上の高熱が出てぐったり
私が獣医師生活11年で遭遇したこれらのケースはいずれも、抗アレルギーの治療や点滴治療で速やかに回復しています。

しかし、日本獣医師会雑誌の動物薬副作用報告などでは、ワクチン接種後、不幸なことにアナフィラキシーショックを発症して死亡してしまう重症例も報告されてます。

これらの犬用ワクチンの副反応の一番の原因として考えられるのが、BSA(牛アルブミン)です。ワクチンを製造する時に、細胞培養法といって試験管内でワクチンの元となるウイルスを細胞とともに増殖させます。そのときの細胞の栄養源が牛の血清です。BSAは牛の血清の主成分です。

ワクチン製剤として精製する際にどうしてもこのBSAが混入します。
ある資料によると(第4回日本内科学アカデミー抄録P298-299)、犬用ワクチンに含まれるBSA量はWHOが人間のワクチンに勧告しているBSA量の最高基準値(50ng/dose)の1000〜70000倍!!にも達するそうです。
つまり、ワクチンの副反応は動物の特異体質、牛のたんぱく質に対するアレルギー反応と考えられています。
もちろん、この説だけでは説明できないケースもあります。
 去年あたりから日本小動物獣医師会では副作用の発生頻度を調査しワクチンメーカに対してより安全なワクチンを開発をするよう要請しています。

私が経験した猫ちゃんの副反応は全て不活化ワクチンを使用したケースでした。不活化ワクチンにはアジュバントと呼ばれる免疫反応を高める物質が添加されています。これに猫ちゃんが反応して発熱したと思われます。

うちの病院ではワンちゃんで年間5〜6匹程度、ワクチンの副反応が出ます。一番、副反応が多い犬種はミニチュア・ダックスです。ワクチンメーカによる差はありません。ただし飼育頭数から計算した副反応発生率ではパグがもっとも出やすいそうです。私はパグで副反応を経験したことはありません。M.ダックス5匹に対してポメラニアン、パピヨン、チワワなどが交代で混じってくるような感じです。

ワクチンの事故や副反応を最小限に抑えるため、うちの病院がはじめてもしくは2,3回目のワクチン接種を希望される飼主様にお願いしているのが
1.午前中早い時間(遅くとも10:30まで)に来院していただく
2.ワクチン接種後30分程度病院で待機していただく
3.ご自宅で動物の様子を観察していただき、何らかの異常があれば電話していただき、必要であれば直ちに再来院していただく
ことです。

ワクチン接種をその日できるだけ避けたほうがよいケース、あるいはうちの病院がその日のワクチン接種をお断りするケースは
1.診察時間終了直前の飛び込み接種希望
2.飼主様が都合がありワクチン接種後、動物の様子が見れない
3.動物の体調が今日に限っていつもと違う
などです。

うちの病院は、ワクチン接種のとき、いろいろうるさいと飼主様からお叱りを受けることがあります。しかし、可能な限り安全に予防接種を行なうため重要なことと考えておりますのでどうか、ご理解をお願いいたします。

以上のような副反応が出るケースは、ワクチン接種頭数から考えると非常に少数です。ワクチン副反応が出てしまうよりも、お散歩中などで伝染病をひろってしまう危険性のほうがはるかに高いです。
 人間でもワクチンの副反応を嫌うあまり予防接種を中止していた世代が、ある種の病気に対して(はしかでしたっけ?)、非常に感染しやすくなって社会問題化したことは記憶に新しいことですよね。
予防接種の副反応を必要以上に怖がることは決してありません。副反応の可能性、「ひょっとしたらうちの子も出てしまうかも」くらい考えていただいて、万が一上記のような副反応が出てしまったらすぐ対応することが肝心です。

ただし、毎年定期的に予防接種をしても何も問題が出ない子は体調さえ良ければいつでも接種OKです。


Posted at 08時36分

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