みずこし動物病院

2012年01月23日(月)

寝耳に水 〜新聞記事の危うさ〜 [院長日記]

 今朝、中日新聞朝刊に「一院一匹預かります。」「災害時ペットも救え」という記事が掲載されたのをご覧になられましたでしょうか?  「愛知県獣医師会は大災害が起きた際に犬猫を各動物病院で少なくとも一匹ずつ預かる方針を固めた」そうです。
 なんと私は今朝の新聞の記事で初めてこのことを知りました。先日の瀬戸旭長久手獣医師会の会合を兼ねた新年会では全くこの話題は出ておりませんでした。

 私はここ数年、愛知県獣医師会の「学術委員」をやっております。少なくとも県の獣医師会の運営の一部に携わっている人間です。県獣医師会の委員が全く知らないことが、どうして先に新聞に掲載されるのでしょう?

 
 実際問題、甚大な災害が起こってしまった場合には、うちの病院の建物が倒壊しておらず、かつ私自身が動ける状態であれば、災害時に被災した動物を預かるのは全く問題がありませんし、そうすべきだと考えています。

しかしながら
1. 預かる順序はどうするのか? 一時預かりが必要な場合は、当然自院のクライアントで伝染病ワクチンをしっかりしていただいている動物を優先したいと考えております。
2. 預かる時の費用は完全にこちらの持ち出し(ボランティア)か、オーナーさんに請求するのか、どこかから費用を出していただけるのか?
3. 災害の混乱によって万が一動物が逃走してしまった場合の補償をどうするのか?
4.被災動物を1匹だけ預かれば良いのか?こちらは全く悪いことをしていないにもかかわらず、受け入れ不可能な動物のオーナーさんから激しいクレームを受ける可能性があります。
などなど考えていかなくてはならない問題は山積です。

以下が愛知県獣医師会開業部会の公式見解です。

中日新聞の県獣の被災動物への対応記事について
         部会長 土屋孝介 
東日本大震災発生時は多数の被災動物が路頭に迷い、被災地の行政や地方獣医師会はその保護や収容にあたり、初期活動の不備が指摘されました。
先日、中日新聞から被災動物への対応について取材がありました。今朝の社会面に「大災害発生時、犬猫を各病院1匹預る方針を固めた。」との記事が掲載されました。被災動物の救護には一時的には、この方向に進むべきであり検討していくと話しております。決定事項とは伝えておりません。

獣医師会の見解は以上です。ここから以下は私の個人的な意見です。
 

 被災時に動物を一時預かりする際のルールが県獣医師会で全く決まっていないし、議論さえされていない状態で新聞にこのような重要な問題が獣医師会の決定事項のように新聞に掲載されてしまい、非常に困惑しております。

 この件に関して半分クレームのような形で自分の名前・所属を明らかにしたうえで中日新聞編集部に問い合わせてみました。
「実際の動物病院が、獣医師会から全く聞いてもいない見ず知らずの内容の事柄をあたかも決定事項のように大きく掲載されたら困る」という内容で先方に言いました。

中日新聞の見解としては
「新聞には[決定]と書いていない。[方針を固めた]と記載してあるので、取材通りの内容だ。今後そのような(受け入れ態勢を構築していく)方針なのであれば、こちらの記事は正しい。全くこちらの記事に落ち度がない」
という極めて強気の返答で「何を訳わからんことを言ってきやがる」というような半分怒ったような対応を受けました。
しかし、 どれだけ「新聞の記事は取材にのっとったもので適正なものだ」と言われても、当の当事者である開業獣医師たちが記事の内容を全く知らない????何かおかしいのでは??????

 しかし、今回の記事を読んだ飼い主さんは今の時点で震災にあってしまったら間違いなく動物病院が被災動物を受け入れ可能になったと思われることでしょう。
 被災動物を受け入れる動物病院側が全く新聞に書いてある内容を周知していない状況で、万が一災害が発生してしまった場合、いったいどうなってしまうのでしょう。生まれるのは混乱とトラブルだけです。
 
 今回の記事の書き方ですと、獣医師会上層部の一人の役員から語られた、実際まだ何も決まっておらず、将来の方向性が示されただけの事柄が、すでに決定されているような捉え方をされてしまいます。

 中日新聞の編集部の方がおっしゃるように記事的には全く問題がないのかもしれませんが、私を含めて一般の読者には誤解を招きかねない内容になっています。 誤解のないような理解しやすい記事を掲載するのが新聞には必要だと思うのですが・・・・・

 もし、この件で病院と動物の飼い主さんとでトラブルが起こってしまった場合、動物の飼い主さんと動物病院を混乱させるような記事を掲載した新聞社に責任はないのでしょうかね。


 この地区で一番購読されている新聞記事の内容が、実際の獣医療の現場を混乱させるものである事が非常に残念です。

繰り返しになりますが、私も含めて、個々の獣医師が災害時にどうするかといった問題意識を持っていると思いますが、現時点で

 愛知県獣医師会に所属する動物病院が、被災した動物をどのように受け入れるかは愛知県獣医師会開業部会としては、全く何一つとして決定していません。
愛知県内の県獣医師会に所属している獣医師のほとんどは「寝耳に水」の状態でとてもびっくりしていると思います。

これが真相です。

 新聞っていったい何?
 

 

Posted at 10時33分

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